こいろり!
「おい泰良、ちょい待てよ!」
「あぁ?離せよ!!早く行かなきゃ、華花が…」
「何処だよ?そいつ、何処にいるっつってた?」
「わ、分っかんねぇ……分かんねーよ!!」
「落ち着け!泰良、落ち着けって!!」
こんな状況で落ち着けっつーのが、無理な話だろ。
赤司が俺の両肩を前後に揺らすから振り払おうとした瞬間、頬をパチンとを打たれた。
「い、痛ってーな!!何すんだよ!?」
「一端、落ち着けって言ってんだよ!!今この状況で、闇雲に探してもどーしょもねーだろ?」
「……じゃぁ、どうしろってんだよ?……俺、華花に何かあったら」
華花に何かあったら、どうしよう──。
想像しただけで頭が真っ黒になる。
さっきまでここで笑っていたのに。
"ふふっ"と笑う華花の笑顔が思い出せるのに。
もし、酷い目に合わされて取り返しのつかない事になっていたら、と嫌な予感しか浮かんでこない。
「よく考えてみろ?相手は泰良が狙いなんだろ?お前を誘い出すだけの為で、まさか手は出さねーだろ?あんな小っちぇー子供なんだから」
「……」
「ほら、何か思い出せよ!あ、華ちゃんの電話にかけ直すとかさ?」
「………カラオケ。後ろで曲が流れてた…後ろでそれっぽいの流れてた…」