こいろり!



「……ぐっ、」


しまったと、思った時はすでに遅くて。
そのまま、後ろから首を腕で締め付けられ、半分引き摺られるように部屋に連行される。

照明は最低限に落とされて薄暗く、タバコとアルコールと鼻にツンとくる臭いがした。




「おー、加賀美。待ったぜ!」

「ひゃはは、思ったより早かったなぁ」


やけに陽気な男達の声。見たことある奴もいれば、知らない顔もある。

同じ学校の奴も……いる。なんて確認していると、床に吹っ飛ばされて尻を打ちつけられた。

いってぇ……。慌てて上半身を起こすと、すぐ横のソファに横になる華花の姿が目に入った。



「おい、華花!?」


虚ろな瞳をした華花が、ゆっくりと視線だけ俺に向けて、驚いたように大きく瞳を見開かれていく。
その小さな女の子の姿は、ピンクのワンピースの胸の部分が汚れていて、頬が赤くなっていた。


殴られたのか──?

ふざけんなよ!なんで華花が痛い目に合わなきゃなんねーんだよ!!
腹の底から憤怒が湧いて、頭ん中が爆破しそうになる。



「おい、お前等!華花に何したんだよ!何やったっつってんだよ!!?」

「こいつ、(きった)ねーんだもん!吐きやがってさぁー。せっかく動画撮ってやろうとしたのによー」


俺の叫び声が部屋に響くと、ケラケラと男達が笑い声を上げた。



「…………た、泰良ぁ…」


ぐしゃっと顔が崩れていく華花を見て、ドクンと大きく心臓が脈打つ。


カッと頭に血が昇る。
立ち上がって、1番手前にいた帽子を被った男の胸ぐらを掴み拳を振り上げた時──、赤司と交わした約束を思い出した。


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