こいろり！

──待てよ！俺も一緒に行くって！

──赤いのは連れて来るなって……言われた

──マジかよ

──だから、俺、1人で行く


──おい、泰良。キレるなよ。感情的に動くな。まず、華ちゃんの安全を優先させろ。

──あぁ？当たり前だろ……



──5分だ。店に入って、5分連絡無かったら……この周って奴に連絡するからな？






「…………た、泰良ぁ…。お家(うち)、か、帰りたいよぉ…」


ヒックヒックと泣き出す華花の、白い肌に赤く腫れた頬が生々しい。心臓がぐっと締め付けられて胸が痛い。

どうしてこんな事になったかって？ガンつけられて派手に喧嘩して、上級生にも目ぇつけられて恨まれたのだって。全部、自分が撒いた種じゃねーか。

こんな華花の姿なんか見たくなかった。
全部、俺のせいだ。俺が華花を巻き込んだんだ。



両手をパッと離して頭の高さまで上げる。
ギリギリと歯を食い縛ってから息を大きく吸って、高ぶる自身の感情を宥(なだ)めた。

部屋の中をザッと見渡す。相手は6……7人、華花を抱えてこの部屋から逃げるのは厳しい。



「お前等(めーら)の狙いは、俺だろ？何で、たまたま一緒にいた近所のガキ拉致ってんだよ？ 全く関係ねーんだけど」


赤司が周に連絡するまで、あと数分だ。
それから、華花が保護されるまで何分かかる？



「どーせ、喧嘩に負けたとか、くっだらねー理由だろ？悪(わり)ーな、んな事で全員覚えてねーんだよ！弱っちいから、集団になんねーと喧嘩売れねーのかよっ！？」


それまで、狙いは全部、俺に向けさせる──。