こいろり!
「……泰良?」
「…………っ、」
「え、あの、……泣いてるのかしら?」
「……ち、がう」
ボロボロと涙が止まらなくて、慌てて服の袖で擦って鼻を啜ったらビシッと激痛が走った。
「…………う"っ、」
「泰良、どうしたの?どこが痛いのかしら?」
「おい、泰良。大丈夫かよ!?医者呼ぶか?」
華花に続いて、赤司まで俺を心配して声をかけてくるから、小さく頭を横に振る。
「……へいき、痛い…わけじゃねーから。痛《い》てーけど、ちょっと、悪りー」
こんな皆がいる前で泣くなんて、恥ずいし情けねー。
震えるように深呼吸をして、今度は痛くないようゆっくりと袖で涙を拭った。
「あら、お取り込み中だったかしら」
その時──、病室に入ってきたのは、高そうな黒い毛皮のコートを身に纏う大人の女。
美魔女こと華花の母親だ。
「ママ!」
「奥様!どうして、こちらへ?」
「うわ、華ちゃんのお母さん?確かに似てるわ」
華花と周、赤司の3人の驚く声が病室に響き渡る。俺は絶句状態で声も出なくて、涙も一気に止まった。