こいろり!





「泰良、いらっしゃい!!」


扉が開けばお嬢様が目を輝かせながら出迎えてくれる。そして、その後ろには……笑顔のまま口元をひきつらせる周の姿が見えた。




「璃香子がまだ具合悪くてさー」

「えー、そうなの?残念だわ。でも泰良が来てくれて嬉しいっ!早く上がって、上がって!」


お嬢様が俺の腕を引いて歩き出すから、ニヤーと口元を緩ませて周に視線を向ける。



「いやー。この間さ、周にあんなこと言われちゃったから迷ったんだけどー」

「迷わずお帰り頂いても……」

「礼儀も愛嬌もある、大好きな璃香子にまた頼まれちゃったからー。俺、断れなくてさー」

「では、ケーキはお受け取りいたしますので学校へお戻り……」



「それに、俺さー。他人に指図や命令されるの大っ嫌いなんだよ。売られた喧嘩は絶対に買うんだぜ?残念、性格まで調べ足りなかったみてーだな」


ベーと舌を出して中指を立てれば、周の表情が崩れていくのが分かった。
眉をつり上げて口が歪んでいくから、ざまーみろ。あー、面白くて堪らねぇ。



「泰良、さっきから何を話してるの?周は早くお茶を持ってきてちょうだい!今日はアプリコットの気分だわ」

「……承知いたしました」

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