こいろり!
「ちっ、するわけねーだろ!?ったく、ふざけんなよ!」
「泰良のケチー」
唇を尖らせる華花が可愛くて、愛おしくて、マジで頭がおかしくなりそうだ。
少しだけ開いている窓から冷たい空気が入ってきて、華花の髪がふわりと揺れた。
柔らかい髪が顔に当たってくすぐったい。
こいつ、いい匂いするよな。シャンプーの香りか?
「…………華花ちょっときて」
「何かしら?」
華花がベッドに両手をついて下から覗き込んでくる。
「もうちょっと、こっち来いよ」
「ふふっ、なぁに?」
微笑んだ華花の頬に両手をそえた。
人が見てないかキョロキョロと周りを確認してから──。
華花の柔らかい唇に"ちゅっ"と音を立ててキスを落とした。
「華花、遅くなったけど9歳のお誕生日おめでとう。俺は華花のこと、……か、可愛いと思ってるよ」
ぎこちない口調でそう言えば、華花は口をポカンとさせアホ面を見せる。
「なんだよ、いつもお前からしてくんのに。されんのは嫌なのかよ?あ、周に言うなよ。あいつに殺されちまうわ」
目を真ん丸にして驚く華花の頭をくしゃくしゃにしてやった。こいつが顔を真っ赤にさせて両手で顔を隠すから、なんだか可笑しくて笑ってしまう。
「だ、だ、……だって!泰良が……っ、恥ずかしいわ!」
「餞別だよ」
「……せんべつ?」
「そ、餞別。向こう行っても元気でな」
俺の小さなお嬢様。その大切な女の子の顔が、悲しそうに歪んでいった。