こいろり!



「今日はありがとう。華ちゃんと泰良くんと3人で話すの変な感じだったけど、なんだか楽しかったな。華ちゃんご馳走さま!」

「ええ、こちらこそ!」


2人の明るい声が飛び交って、璃香子の家の扉が閉まる。
と同時に、足を踏みつけられて、隣に立つ華花が下から俺をギッと睨み付けた。





「……そうですよねー」

「そうよ、私は怒ってるのよ。どうして周を殴ったのよ?怒ってるんだから」


華花が頬を膨らませて眉をつり上げている。



「でも、周が……。周が、璃香子には喧嘩したこと言わない方がいいって言うから」

「うん」

「大事な時期だから、心配かけないように、余計な負担をかけないようにって……。怒ってないフリしたけど、」

「うん」


声のトーンを落としているのも、きっと中にいる璃香子に聞こえないようにだ。

寒いのか華花がその小さな口元に両手を当てて白い息を吐き出した。


華花の方が、俺よりずっと他人(ひと)の事を考えている。

俺の方がよっぽど子供(ガキ)だ──。




「ふはっ、お前チビでガキだけど」

「何、笑ってるのよ?」

「俺のがもっとガキだわ」

「え?」

「………ごめん、」


その小さな肩にポスンと頭を乗っけた。




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