こいろり!
そして、現在。
スマホのナビを頼りに、俺は見たことのない大きな豪邸の前に立ち尽くしていた。
「やっべー。マジか、でっか……」
自転車を止めて、ケーキの入った白い箱を右手に持つ俺は完全に小物だ。
なんだこの城みたいな家は。塀なんて俺の身長の2倍はある。
住所を聞いたとき、確かに金持ち団地だとは思ったけどこんな凄いものなのか。
なんでこんな家の奴がうちのケーキなんて食うのだろうか。
もっと高級なやつ、買えんじゃね?
「あー、えっと……、洋菓子店kagamiっす」
インターフォンを鳴らしてこう言えば、「お待ちしてました」と声がして、ギギギッと勝手に門が開いた。
うわ、自動かよ。
少し歩くと大きな玄関があって、ドアノブに手を伸ばした瞬間──、
「璃香子っ!いらっしゃい!!」
「…痛ってぇ……、」
勢いよく扉が開けられ後ろに吹っ飛ばされた。
地面に尻をついた状態で顔をあげると、すぐ前に両手を広げて立つ奴がいる。それは、フリフリのピンクのワンピースを着た小さなガキだった。
「いきなりドア開けんなよ!痛ってーだろ?ぶつかったじゃねーかよ!!」
怒鳴り散らせば、そのチビが大きな瞳をパチパチとさせて座り込む俺を見下ろした。