こいろり!




「よ、洋菓子店……kagamiでーす」


大きな豪邸のインターフォンを押すと、ピーンポーンと音が鳴り響いた。

曜日指定で頼まれてるケーキは届けなきゃいけねーし。璃香子に行かせる訳にもいかねー。

あれから、華花からの連絡は無かったけど、
きっとまだ落ち込んでるんだろうな。
俺からも連絡できないから、結局予定通り華花の家に来たんだけど。


はぁ。華花になんて、声かけんのか分かんねー。

溜め息をついて頭を抱えたところで、丁度ドアがガチャリと開いた。





「泰良っ、いらっしゃい!!」

「ぐえっ……」


出てきたのは華花で、走って飛び付いてくるから、その勢いで地面に尻もちをついた。



「痛ってぇなー、いきなり抱きついてくんじゃねーよ」

「だって、久し振りなんだもの!」

「あぁ?それはお前が……」

「寂しかったわ!ずっと、会いたかったのよ?」

「な、……んだよ、連絡くれれば俺はいつだって…………ん?」


その小さな手が震えながら俺の背中を掴むから。思わず華花の背中に手を回しそうになって、パッと止める。


俺、何て言おうとした──?


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