こいろり!
11.お嬢様とデート
「泰良っ!!早く早く、こっちよ!始まってしまうわ!」
「おい、ちょっと待てよ!」
華花が声を弾ませて俺の名前を呼んで、嬉しそうに手招きをする。
人混みの中を走っていく華花を追いかけるように足を早めた。
「わぁ、凄いわ!大きいわ!!」
「はしゃぎ過ぎだって。ったく、はぐれんなよ?」
華花がトラのおやつのショーを見てキラキラと目を輝かせるから、しょうがねーなと息を吐く。
数日前、あの美魔女が華花にドリームランドパークのチケットをあげたらしい。
その流れで、華花と一緒に遊びに行く事になったのだけど。
ドリームランドパークとは、遊園地と動物園が一緒になったアミューズメント施設だ。
華花は「チケットを頂いたけど、ママは人混みが嫌いだから私にいつもお世話になってる子と行きなさいって私にくれたのよ」と言ってたけど、絶対あの美魔女が買ったんだよな。
入場料、フリーパス、園内で使えるギフトカードも合わせれば結構な額になる。
ガチだ。あの美魔女、ガチで華花に綺麗な思い出を作ってあげようとしている。
あんなこと言われたら断れねーし。
檻の中で肉の骨をしゃぶりつくトラ目の前にして、華花の母ちゃんの顔を思い出す。
……ぶるり、とマジ寒気がしてきた。