こいろり!
「それに、俺や璃香子と一生会えねぇわけじゃねぇだろ?今はネットですぐ連絡取れるしさ。お前んち金持ちだから休みの日なんか飛行機でビューンって帰ってこれんじゃねーの?」
「た、泰良は?さみしい?私がいなくなったら寂しがってくれるかしら?」
「………あぁ?んーと……」
「ひどいわ!嘘でも寂しいって即答してくれたっていーじゃない!?」
華花の叫び声と共に顔を上げるから、パチリと目が合う。
その顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
「ふはっ、嘘だよ。お前いなくなったら寂しいよ」
「ほ、本当ね?」
「いっつも、うるせーくらいにまとわりついて騒いでんのに、急にいなくなったらつまんねーだろ?」
「それだけなの……?」
「物足りねー……な、多分」
と言って、自分の上着で華花の涙を鼻水ごと拭いてやる。
「ごめんなさい、泰良のお洋服が汚れてしまったわ」
「べ、別に……」
華花の大きな瞳は、いつもより半分になって、鼻も頬も瞼さえも赤くなっていた。
俺の服が掴まれて、ギュッと華花の方へ引っ張られる。
あ、前と同じだ。これ絶対キスされんな。
分かってたのに、避けなかったのは──、
「……泰良なんで止めないのよ?ふふっ、でも1回も2回も同じよね!」
あの柔らかい唇に触れてみたかったのと、この華花の笑った顔を見たかったから──。
一瞬だけ触れたその唇は生温かくて少ししょっぱくて、華花の涙の味がした。