君は,君は。
「えー。ほんとに帰るの? もうちょっといたら?」



私の袖をくいくいひっぱって止めるのは深月くん。

私はもう帰らなきゃとだけ言った。



「あっそうだ。深月くんもお兄ちゃんの卒業式来たら? そしたらまた会えるよ」

「じゃあ行く!」



元気な返事をした深月くんは,突然爆弾を落とす。



「唯また来てね! それで,それでおれのお嫁さんになって…?」

「え」「は?」



まさかそこまで気に入って貰えたとは……

呆然とする私の横で,何故か瑞希は眉を寄せる。



「だめだろ」

「なんで?」

「いや,だって,唯は……いや,なんでもない。もっとそうゆうのは大きくなってから考えなきゃだめだ」

「え~~けち~!!」



唯は,なに?

とくとく溢れそうな気持ちを抑さえて,私は苦笑いをして見せた。


「じゃあまたね…瑞希もバイバイ」

「うん。ありがと。本今日読むわ」

「はーい」


とりあえず。

告白。
瑞希が。

そればかりが頭を巡る。

帰り道,私は何故か味の無いガムでもずっと噛んでいるような気持ちだった。
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