君は,君は。
ーすぅっ



「瑞希,あのね。卒業式で貰った,胸元に止めた花が欲しい」



安全ピンで止める緑の造花。

緑は今年体育大会で緑軍だったから。

こんな遠回りしで伝わったかな。

突然そんなもの欲しがって引かれたりしないかな。

でも大丈夫。

きっと伝わった。

だってほら,瑞希は驚いた顔をして,ちょっとショックな顔をした。



「それって……え…?」

「お願い。瑞希」

「あ,うん」



瑞希は,卒業証書と貰ったガーベラで塞がれていない方の手で,器用にそれを取る。

そして,すっと私に渡した。



「ごめん。その,俺今まで何にも気づかなくて……それから」

「いいの! …自分で始めたことだから」



私は肩をすくめる。
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