夢幻の飛鳥~いにしえの記憶~
倉庫荒らしの犯人
その日の夕方になり、だんだんと辺りも暗くなってきていた。
仕事を終えた稚沙は、自身の住居に戻るため、宮内を歩いて移動していた。
女官の住まいは小墾田宮のすぐそばにあり、彼女はそこから宮まで歩いて通っている。
「さて、仕事も終わったし。暗くなる前に早く家に戻らないと」
彼女が自身の住居に戻ろうと歩いている時だった。誰かが早足で移動しているような音が聞こえてくる。
(誰の足音だろう?まだ完全に暗くなってる訳でもないから、そこまで急ぐこともないのに)
だがその足音は、なぜか宮の外とは逆の方向に走っているように聞こえる。
「この向こうは炊屋姫様の倉庫だし、また誰かが用事でもあるのかな?」
ふとその時、彼女の脳裏に今日起こった倉庫荒らしのことがよみがえる。
(まさか、また荒らしが入ろうとかしてないわよね)
だがもう少しで日がすっかり落ちて暗くなる。もし倉庫に侵入するなら今が一番良い時だ。
「ち、ちょっと見るだけなら、だ、大丈夫なはず……」
稚沙も少し怖くはあったが、少し離れた所から倉庫を見るだけである。
であれば、そこまで心配することもないだろう。
そこで彼女は急遽行き先をかえ、そのまま倉庫の様子を見にいくことにした。
そしてようやく倉庫が見えてきた時である。誰かが倉庫の中に入って行くのが見えた。
(誰かが倉庫の中に入ったみたい。でも割りと小柄そうだったから、多分女性だわ)
稚沙は相手が女性ということで、そこまで危険性はないと考えた。
そこで彼女は、そのまま倉庫の側まで実際に行ってみることにした。
それから彼女が、あともう少しで倉庫に辿り着くといった時である。
急に後ろから誰かに声をかけられた。
「おい、こんな所で何をしている?」
稚沙は一瞬『ひぃー!』悲鳴を上げそうになったが、直ぐさま自身の手で口をふさいだ。
そしてそのままの状態で、彼女はゆっくりと後ろを振り向いた。
するとそこには蘇我椋毘登が立っており、彼は少し不思議そうな顔をしながら彼女を見ていた。
(ま、まさか、蘇我椋毘登にまた会うなんて……)
そんな稚沙を見て、椋毘登はそのまま彼女のそばまでやってくる。
「お前どうしたんだ?口なんか塞いで」
(まずい、このままでは自分が怪しまれてしまう)
「ちなみに俺は、今日の寝床で使う部屋に行く途中だった。だがお前がまたこの辺りをうろうろしてる風に見えたんでね」
彼は彼で、稚沙には何かと疑われていた。なのでとりあえず説明だけはしておきたかったようだ。
それを聞いた稚沙も、ここは諦めて彼に倉庫のことを話すことにし、口から手を離していった。
「今ちょうど誰かが倉庫の中に入ったみたいなの。それで今日の荒らしの件のこともあったから、少し気になって」
椋毘登もそれを聞いて少し驚いたようで、思わず倉庫の方を見る。
そして音を漏らさずにしていると、確かに倉庫の中から「ゴソゴソ」と何か音のようなものが聞こえてくる。
「確かに中に誰かがいるみたいだ……」
椋毘登は少し表情を厳しくさせ、低めの声でそう答える。
それから2人は暫くの間、倉庫を見ていることにした。
だが一向に倉庫から人が出てくる様子はない。
「よし、分かった。なら俺が中の様子を見に行ってくる。お前はここで待っていてくれ」
そして彼は、余り音を立てないようにしながら、ゆっくりと倉庫の入り口まで向かった。
そして入り口の前までくると、彼は一呼吸おいてから、中に入ろうとした。
すると丁度その時、急に倉庫の中から人が出てきた。
椋毘登は中から出てきた相手の顔を見るなり、思わずその場で叫んだ。
「お、お前は!!」
続いて稚沙もその人物を見て、椋毘登同様にとても驚いた。
「こ、古麻!!どうしてあなたがこんな時間に?」
2人の前に現れたのは、稚沙と同じこの宮の女官である、あの古麻だった。
仕事を終えた稚沙は、自身の住居に戻るため、宮内を歩いて移動していた。
女官の住まいは小墾田宮のすぐそばにあり、彼女はそこから宮まで歩いて通っている。
「さて、仕事も終わったし。暗くなる前に早く家に戻らないと」
彼女が自身の住居に戻ろうと歩いている時だった。誰かが早足で移動しているような音が聞こえてくる。
(誰の足音だろう?まだ完全に暗くなってる訳でもないから、そこまで急ぐこともないのに)
だがその足音は、なぜか宮の外とは逆の方向に走っているように聞こえる。
「この向こうは炊屋姫様の倉庫だし、また誰かが用事でもあるのかな?」
ふとその時、彼女の脳裏に今日起こった倉庫荒らしのことがよみがえる。
(まさか、また荒らしが入ろうとかしてないわよね)
だがもう少しで日がすっかり落ちて暗くなる。もし倉庫に侵入するなら今が一番良い時だ。
「ち、ちょっと見るだけなら、だ、大丈夫なはず……」
稚沙も少し怖くはあったが、少し離れた所から倉庫を見るだけである。
であれば、そこまで心配することもないだろう。
そこで彼女は急遽行き先をかえ、そのまま倉庫の様子を見にいくことにした。
そしてようやく倉庫が見えてきた時である。誰かが倉庫の中に入って行くのが見えた。
(誰かが倉庫の中に入ったみたい。でも割りと小柄そうだったから、多分女性だわ)
稚沙は相手が女性ということで、そこまで危険性はないと考えた。
そこで彼女は、そのまま倉庫の側まで実際に行ってみることにした。
それから彼女が、あともう少しで倉庫に辿り着くといった時である。
急に後ろから誰かに声をかけられた。
「おい、こんな所で何をしている?」
稚沙は一瞬『ひぃー!』悲鳴を上げそうになったが、直ぐさま自身の手で口をふさいだ。
そしてそのままの状態で、彼女はゆっくりと後ろを振り向いた。
するとそこには蘇我椋毘登が立っており、彼は少し不思議そうな顔をしながら彼女を見ていた。
(ま、まさか、蘇我椋毘登にまた会うなんて……)
そんな稚沙を見て、椋毘登はそのまま彼女のそばまでやってくる。
「お前どうしたんだ?口なんか塞いで」
(まずい、このままでは自分が怪しまれてしまう)
「ちなみに俺は、今日の寝床で使う部屋に行く途中だった。だがお前がまたこの辺りをうろうろしてる風に見えたんでね」
彼は彼で、稚沙には何かと疑われていた。なのでとりあえず説明だけはしておきたかったようだ。
それを聞いた稚沙も、ここは諦めて彼に倉庫のことを話すことにし、口から手を離していった。
「今ちょうど誰かが倉庫の中に入ったみたいなの。それで今日の荒らしの件のこともあったから、少し気になって」
椋毘登もそれを聞いて少し驚いたようで、思わず倉庫の方を見る。
そして音を漏らさずにしていると、確かに倉庫の中から「ゴソゴソ」と何か音のようなものが聞こえてくる。
「確かに中に誰かがいるみたいだ……」
椋毘登は少し表情を厳しくさせ、低めの声でそう答える。
それから2人は暫くの間、倉庫を見ていることにした。
だが一向に倉庫から人が出てくる様子はない。
「よし、分かった。なら俺が中の様子を見に行ってくる。お前はここで待っていてくれ」
そして彼は、余り音を立てないようにしながら、ゆっくりと倉庫の入り口まで向かった。
そして入り口の前までくると、彼は一呼吸おいてから、中に入ろうとした。
すると丁度その時、急に倉庫の中から人が出てきた。
椋毘登は中から出てきた相手の顔を見るなり、思わずその場で叫んだ。
「お、お前は!!」
続いて稚沙もその人物を見て、椋毘登同様にとても驚いた。
「こ、古麻!!どうしてあなたがこんな時間に?」
2人の前に現れたのは、稚沙と同じこの宮の女官である、あの古麻だった。