夢幻の飛鳥~いにしえの記憶~
稚沙が倉庫に向かって走っていると、彼女の前方から、何やら見覚えのある人物がこちらに向かって歩いてきているのが見えた。
(あれは……蘇我馬子だわ)
彼女が目にしたのは、豪族蘇我氏の有力者である蘇我馬子だ。
彼は今の大和の豪族達の中で、もっとも力のある人物である。
そんな彼が突然現れたので、稚沙は思わず走るのを止めて、横にずれて道をあけることにした。
そしてそんな彼の少し後ろをもう一人、一緒について歩いている人物がいることにも、彼女は気付く。
稚沙は一体誰だろうと思い、その人物にふと目をやる。
馬子同様にとても上等そうな袍と袴を着ており、頭には帽子を被っていた。
見た目は稚沙よりも少し年上の青年のようで、割と顔立ちも整っていた。
(初めて見る男の子だわ……彼も蘇我の人間なのかしら?)
稚沙はとりあえず、蘇我馬子とその青年が通り過ぎるまで、待つことにした。
馬子はそんな彼女に対し、特に声をかける訳でもなく、無言でそのまま彼女の側を横切っていく。
彼女は続けて馬子の後ろにいる青年に思わず目をやる。
相手の青年も視線を感じたのか、一瞬稚沙と目があった。
だが彼は特に表情を変えることなく、馬子同様に無言で、彼女の横を歩いていった。
(ちょっと感じの悪そうに見えたけど、偶然かしら?)
稚沙は蘇我馬子とその青年の後ろ姿を、そのまま少しの間眺めていた。
そして2人の姿が小さくなった頃、彼女も再び目的の場所に向かうことにした。
「では、急いで倉庫に向かわないと。また遅くなって炊屋姫様に迷惑を掛けたくないもの」
そして稚沙はやっと炊屋姫の私用の倉庫の元にたどり着いた。
(とにかく早く終わらせて戻らないと……)
彼女はそれから倉庫の中に急いで入っていく。
倉庫の中には彼女が持ってきたような木簡もあれば、置物、他国から取り寄せた書物等、様々だ。
彼女は女官なので、炊屋姫からこの倉庫に入る許可を得ている。でもだからといって、むやみに触らないようにしていた。下手に触って壊しでもしたら大変な事になる。
(相変わらずここには、色んな物があるのよね……)
稚沙はとりあえず木簡が置かれている場所に行き、手に持っていた木簡を簡単な仕分けだけして、それからその場所に置いていった。
稚沙は元々和歌を詠むのが好きなため、文字も一通り読める。
彼女自身、女官としてここに仕えるようになったのだが、文字が読めるのは正直助かっていた。
「さてと、じゃあ戻りますか」
稚沙は倉庫内の物に、うっかり触ってしまわないよう気をつけながら外に出ていく。
そしてそれから出急いで炊屋姫の元へと向かった。
(あれは……蘇我馬子だわ)
彼女が目にしたのは、豪族蘇我氏の有力者である蘇我馬子だ。
彼は今の大和の豪族達の中で、もっとも力のある人物である。
そんな彼が突然現れたので、稚沙は思わず走るのを止めて、横にずれて道をあけることにした。
そしてそんな彼の少し後ろをもう一人、一緒について歩いている人物がいることにも、彼女は気付く。
稚沙は一体誰だろうと思い、その人物にふと目をやる。
馬子同様にとても上等そうな袍と袴を着ており、頭には帽子を被っていた。
見た目は稚沙よりも少し年上の青年のようで、割と顔立ちも整っていた。
(初めて見る男の子だわ……彼も蘇我の人間なのかしら?)
稚沙はとりあえず、蘇我馬子とその青年が通り過ぎるまで、待つことにした。
馬子はそんな彼女に対し、特に声をかける訳でもなく、無言でそのまま彼女の側を横切っていく。
彼女は続けて馬子の後ろにいる青年に思わず目をやる。
相手の青年も視線を感じたのか、一瞬稚沙と目があった。
だが彼は特に表情を変えることなく、馬子同様に無言で、彼女の横を歩いていった。
(ちょっと感じの悪そうに見えたけど、偶然かしら?)
稚沙は蘇我馬子とその青年の後ろ姿を、そのまま少しの間眺めていた。
そして2人の姿が小さくなった頃、彼女も再び目的の場所に向かうことにした。
「では、急いで倉庫に向かわないと。また遅くなって炊屋姫様に迷惑を掛けたくないもの」
そして稚沙はやっと炊屋姫の私用の倉庫の元にたどり着いた。
(とにかく早く終わらせて戻らないと……)
彼女はそれから倉庫の中に急いで入っていく。
倉庫の中には彼女が持ってきたような木簡もあれば、置物、他国から取り寄せた書物等、様々だ。
彼女は女官なので、炊屋姫からこの倉庫に入る許可を得ている。でもだからといって、むやみに触らないようにしていた。下手に触って壊しでもしたら大変な事になる。
(相変わらずここには、色んな物があるのよね……)
稚沙はとりあえず木簡が置かれている場所に行き、手に持っていた木簡を簡単な仕分けだけして、それからその場所に置いていった。
稚沙は元々和歌を詠むのが好きなため、文字も一通り読める。
彼女自身、女官としてここに仕えるようになったのだが、文字が読めるのは正直助かっていた。
「さてと、じゃあ戻りますか」
稚沙は倉庫内の物に、うっかり触ってしまわないよう気をつけながら外に出ていく。
そしてそれから出急いで炊屋姫の元へと向かった。