夢幻の飛鳥~いにしえの記憶~
稚沙が庁の近くまでやってくると、椋毘登が宮人の男性と話しをしているのが見えた。
彼は蘇我馬子の甥で、彼の護衛でもあるのだが、わりと頭も良く優秀なようで、最近は仕事を色々と頼まれもしているようだ。
そして何といっても、彼の人前での愛想の良さがとても好評なようで、宮の娘達の間でも少し噂にもなりはじめていた。
稚沙がそんな彼に声をかけても良いかと悩んでいたが、どうやら相手の男性との話が終わったようである。
(よし、今なら大丈夫そう!)
すると稚沙はいきなり「椋毘登ー!!」と大きめの声で彼にいった。そしてさらには手をブンブンと振ってみせる。
椋毘登はいきなり稚沙に大声で名前を呼ばれたので、慌てて周りの様子を見渡す。幸い周りに他の人はいないようだ。
稚沙はそんな椋毘登の様子に構うことなく、そのまま彼めがけて走ってやってきた。
「椋毘登が今日きてるって、厩戸皇子に先程聞いたの!」
稚沙はニコニコしながらそう彼にそう話す。前回の件があったせいか、彼に対しての嫌悪感はだいぶなくなっていた。
だが椋毘登の方は、少し恥ずかしそうにしている。それに心なしか顔も少し赤くなっていた。
「稚沙、お願いだから、余り大きな声で名前を呼ばないでくれ。周りの目もあるし、俺もこう見えて、ここの人達には色々と気を遣ってるんだ……」
稚沙から見た彼はとても要領が良く、ここの宮の人達とも良い感じに接してるように見えた。
だがそうはいっても、まだ若干16歳の青年である。彼は彼なりに色々と気を使っているようだ。
「まあ、そうなの。確かに椋毘登って人前では割と愛想良くしてるものね。
私には余りそんな態度示さないけど」
「まぁお前は女官といっても、特に気を使う相手には思えないからな」
椋毘登は少し愉快そうにしてそう稚沙に話す。つまり彼女の前では、彼もわりと素の自分を出しているのだろう。
「そういえば、あなた古麻の前でもやたら愛想が良かったわね?」
「古麻?あぁ、以前に会った、お前と一緒にいた女官か。あの時は彼女が倉庫荒らしの犯人と疑っていたからね。それに彼女はお前と違って割と美人だったし……」
椋毘登は少しいいにくそうにしながら、そう答える。
稚沙からしてみれば、彼が他の女性を褒める話を聞いたのは初めてだ。
(何だろう……椋毘登からそういう発言を聞くのは、ちょっと嫌な感じがする)
彼女は彼女で、少し悶々とする思いを感じた。
「とりあえず俺的には、お前は割と素で話しやすい感じかな」
そういって彼は、稚沙の頭をポンポンと叩く。
「そ、そうなんだ……」
結局のところ、彼も厩戸皇子と同じで自分を女性とは見ていないのだろう。
そう思うと、稚沙はやはり自分が少し虚しく思えてくる。
(私が男性に、女性として見てもらうには、今後どうしたら良いんだろう)
彼は蘇我馬子の甥で、彼の護衛でもあるのだが、わりと頭も良く優秀なようで、最近は仕事を色々と頼まれもしているようだ。
そして何といっても、彼の人前での愛想の良さがとても好評なようで、宮の娘達の間でも少し噂にもなりはじめていた。
稚沙がそんな彼に声をかけても良いかと悩んでいたが、どうやら相手の男性との話が終わったようである。
(よし、今なら大丈夫そう!)
すると稚沙はいきなり「椋毘登ー!!」と大きめの声で彼にいった。そしてさらには手をブンブンと振ってみせる。
椋毘登はいきなり稚沙に大声で名前を呼ばれたので、慌てて周りの様子を見渡す。幸い周りに他の人はいないようだ。
稚沙はそんな椋毘登の様子に構うことなく、そのまま彼めがけて走ってやってきた。
「椋毘登が今日きてるって、厩戸皇子に先程聞いたの!」
稚沙はニコニコしながらそう彼にそう話す。前回の件があったせいか、彼に対しての嫌悪感はだいぶなくなっていた。
だが椋毘登の方は、少し恥ずかしそうにしている。それに心なしか顔も少し赤くなっていた。
「稚沙、お願いだから、余り大きな声で名前を呼ばないでくれ。周りの目もあるし、俺もこう見えて、ここの人達には色々と気を遣ってるんだ……」
稚沙から見た彼はとても要領が良く、ここの宮の人達とも良い感じに接してるように見えた。
だがそうはいっても、まだ若干16歳の青年である。彼は彼なりに色々と気を使っているようだ。
「まあ、そうなの。確かに椋毘登って人前では割と愛想良くしてるものね。
私には余りそんな態度示さないけど」
「まぁお前は女官といっても、特に気を使う相手には思えないからな」
椋毘登は少し愉快そうにしてそう稚沙に話す。つまり彼女の前では、彼もわりと素の自分を出しているのだろう。
「そういえば、あなた古麻の前でもやたら愛想が良かったわね?」
「古麻?あぁ、以前に会った、お前と一緒にいた女官か。あの時は彼女が倉庫荒らしの犯人と疑っていたからね。それに彼女はお前と違って割と美人だったし……」
椋毘登は少しいいにくそうにしながら、そう答える。
稚沙からしてみれば、彼が他の女性を褒める話を聞いたのは初めてだ。
(何だろう……椋毘登からそういう発言を聞くのは、ちょっと嫌な感じがする)
彼女は彼女で、少し悶々とする思いを感じた。
「とりあえず俺的には、お前は割と素で話しやすい感じかな」
そういって彼は、稚沙の頭をポンポンと叩く。
「そ、そうなんだ……」
結局のところ、彼も厩戸皇子と同じで自分を女性とは見ていないのだろう。
そう思うと、稚沙はやはり自分が少し虚しく思えてくる。
(私が男性に、女性として見てもらうには、今後どうしたら良いんだろう)