どうにもこうにも~恋人編~
「おまえ、騙されてるんじゃないか?」

「そんなに年上の人と」

 母もびっくりして目を丸くした。それはそうか。年は私より父や母の方が近い。

「騙されてるわけないじゃん。今度連れてくるから。会ったら分かるって」

「慧は素直すぎるところがあるからねぇ。慧がいい人だって言うならいい人なんだろうけど…」

 母まで心配そうに眉尻を下げて頬に手を当てた。

「どうせ碌な男じゃないに決まってる。俺が見定めてやる」

「まだ会ってもいないくせにそんなこと言わないでよね。彼氏のひとりやふたり連れて来いって言ってたじゃん」

「いざとなったら心配になるものなのよ。ね、お父さん」

「当り前だろ。変な男に引っかかってるんじゃないかと」

「お父さんなんかよりずっといい男なんだから!」

 父はむっとして缶ビールを煽った。母は「楽しみねぇ」と言いながら笑っていた。

 付き合い始めてからまだそんなに長くはないのに、連れてくるなんて勢いで言ってしまった。どうしよう…。

 夕食後、早速私は西島さんに電話をかけた。

「と、いうことがありまして、今度うちの両親にお会いしていただきたいんですけど…」

<いいですよ>

<そのうちご両親には挨拶に行かなきゃならないと思っていたんです。早い方がいいでしょう。昨夜は君を無断で拝借してしまったわけですし>

「すみません。母はともかく、父はあまりよく思ってないようなんです」

<かわいい娘のことですから心配なんだと思います。それを払拭して、私たちの関係を認めてもらいましょう>
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