どうにもこうにも~恋人編~
 それから2週間後の日曜日の午後、西島さんと私の両親が初対面する日を迎えた。私と彼は、私の実家の最寄り駅で待ち合わせをして彼に車で迎えに来てもらった。

約束時間の5分前、プラチナシルバーのセダンが駅のロータリーに入ってくるのが見えた。その車に乗り込むと、ネイビーのスリーピーススーツをパリッと着こなす西島さんが迎えてくれた。ちなみに私も一応カジュアルになりすぎないブラウンのプリーツワンピースだ。

「そのスーツ、かっこいいですね」

「特別なときにしか着ないんだ、このスーツ」

「特別なとき」という言葉に胸のあたりがうずうずしてしまう。彼はにっと笑って車を私の家へと走らせた。

 あっという間に私の家に着いてしまった。緊張感が高まる。彼の顔を見るといつものように余裕綽綽といったかんじだ。

「緊張しないんですか?」

「してるよ」

「全然そんなふうに見えません」

「大人だからね」

 玄関のドアを開けると、早速母が出てきてくれた。母もいつもは着ないようなサテン素材のボウタイブラウスとシックなダークグリーンのスカートに身を包んでいた。

「いらっしゃーい。わざわざ来ていただいてすみませんね。こちらにどうぞ」

 母は私たちをリビングに通した。リビングのソファには思いつめたような顔で一点を見つめるスーツ姿の父が座っていた。

これは、顔合わせか…?
< 66 / 91 >

この作品をシェア

pagetop