どうにもこうにも~恋人編~
「三宅先輩のことは、何とも思ってないですよ」

「彼の方はそうではないようですがね。私も人のこと言えた立ちじゃないですが。まあ、彼には気の毒ですが、君には私という、うんと年上の恋人がいるのでしょうがないですね」

 彼はスマホをベッドサイドテーブルに置いた。

「あの、さっきの啓之さんが言ってたことなんですけど…」

「さっき言ってたこと?」

「残りの人生、私に捧げるっていう…」

「ええ」

「それって…」

「そのままの意味ですよ」

「私、自分の解釈に自信がないんですけど…」

「じゃあもっと平たい言葉で言おうか」

 彼が身体を起こしてやけに真剣な眼差しを私に向けるので、私も身体を起こして彼の次の言葉を待った。


「結婚してください」


ああ、

自惚れていたわけじゃなかった。

なんだか気が抜けてきてだんだんと目頭が熱くなってくる。

「返事は?」

「よろしくお願いします」

 喉が詰まって語尾が震えた。

「なんで泣くんですか」

 彼は笑いながら私の肩を抱いた。

「間の抜けたプロポーズですみませんね。こんなロマンチックな夜景を前にふたりとも裸だなんて」

「そんなことないです。啓之さんの言葉が嬉しいです」

 今まで生きてきた中で、一番幸せな夜だった。
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