どうにもこうにも~恋人編~
ホテルから車で30分も走ると海にたどり着く。車の外に出ると潮の匂いがした。まだ少し肌寒いが、春の気配が感じられる。
私たちは誰もいない浜辺にふたりで並んで腰を下ろした。今日は晴れているので波も穏やかだ。さざ波の音を聞きながら潮風に吹かれた。
「実を言うと、私はずっと悩んでいました」
しばらく黙って海を見つめていたが、先に口を開いたのは啓之さんの方だった。
「悩んでたって?」
「『結婚』なんていうのは、君には早すぎるかもしれない。もっといろんな人と付き合って、いろんな経験をするべきなのに、私を最初で最後の男にするのはもったいないという気持ちがありました」
「西島さんにとっては、早いってことはないでしょう、結婚。ずっと、私のために待っていてくれてたんですよね?」
「そうですね」
彼は微笑み、優しい瞳で私を見つめた。
「しかし、三宅くんみたいな、年齢の近い男の子の方がいいんじゃないかと何度も思ったものです。プロポーズした手前であれなんですけど、昨夜見た写真は、正直堪えました」
彼は悲しげに笑って俯いた。
「私には、啓之さんだけですよ?」
「それに、私の残りの人生は君よりも短い。先に逝くのはきっと私の方です。遺される者の方がずっと辛いのは分かっています。それでも、私は君と生きたいと思いました。残りの人生を君のために生きたいと思ったんです。自分の手で君を幸せにしたいと。こんなのはひとりよがりな考えなんじゃないかと、ずっと悩んでいました」
私たちは誰もいない浜辺にふたりで並んで腰を下ろした。今日は晴れているので波も穏やかだ。さざ波の音を聞きながら潮風に吹かれた。
「実を言うと、私はずっと悩んでいました」
しばらく黙って海を見つめていたが、先に口を開いたのは啓之さんの方だった。
「悩んでたって?」
「『結婚』なんていうのは、君には早すぎるかもしれない。もっといろんな人と付き合って、いろんな経験をするべきなのに、私を最初で最後の男にするのはもったいないという気持ちがありました」
「西島さんにとっては、早いってことはないでしょう、結婚。ずっと、私のために待っていてくれてたんですよね?」
「そうですね」
彼は微笑み、優しい瞳で私を見つめた。
「しかし、三宅くんみたいな、年齢の近い男の子の方がいいんじゃないかと何度も思ったものです。プロポーズした手前であれなんですけど、昨夜見た写真は、正直堪えました」
彼は悲しげに笑って俯いた。
「私には、啓之さんだけですよ?」
「それに、私の残りの人生は君よりも短い。先に逝くのはきっと私の方です。遺される者の方がずっと辛いのは分かっています。それでも、私は君と生きたいと思いました。残りの人生を君のために生きたいと思ったんです。自分の手で君を幸せにしたいと。こんなのはひとりよがりな考えなんじゃないかと、ずっと悩んでいました」