先生、大嫌いです。ーあるふたりの往復書簡ー
一通目【ありがとうな。】
4月5日

志摩野英里様
そろそろ入学式かな。おめでとう、後輩。
講堂脇の桜はおすすめの写真スポットです。散ってないといいけど。

手紙、ありがとう。卒業式や離任式で色んな手紙をもらったけど、こんなに真剣な、泣いてるみたいな切実な手紙をくれたのは君だけだったので、俺も真面目に返事を書くことにしました。

ありがとうな、気持ちだけもらっとく。
返事をもらうことは望んでなかったかも知れないけど、まあ、俺も「いてもたってもいられなかった」って気持ちだ。
本当に驚いた。それは俺の話で合ってるか?
こんなこと言ったらまた「バカにしてるんですか?」って睨まれそうだ。
でも確かに、志摩野に頼み事を断られたことはなかったな。今思えば、だけど。
文系なのに数学の成績が良かったのも頑張ってくれてたのかな。それとも少しでも数学が楽しいと思ってくれたなら、こんなに嬉しいことはないな。

先生のくせにとりとめがなくなった。数学しかやってないから許してくれ。

3月31日までは、志摩野は生徒で俺は副担任だから、個人的な手紙はダメかなというのもあって遅くなった。これも、まずいのかな。意識低い先生ですまん。
携帯も現住所もわからないから、在学中の住所に送らせてもらう。これは本当まずいから内緒な。
赴任先は遠くなかったせいか、あまり環境は変わりません。男子校は初めてなので、まだ未知数。それも楽しみにしているところです。

大学でも、志摩野らしくいれば大丈夫。
いちOBとして、応援しています。

秋場孝行




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