先生、大嫌いです。ーあるふたりの往復書簡ー
二通目【お言葉に甘えます。】
4月26日

志摩野英里様
ありがとう。そう、たまたま。です。

そうか、高校の時はおばあちゃんと住んでるって言ってたな。
福本先生の代打で面談したときに、着物の裾から飴玉をたくさん出してきた衝撃は今も忘れられない。俺も孫扱いだったな。

バレたらとか、あまり考えてなかった。
志摩野の口調が脳内再生されて、思わず「すまん」って言ってしまった。
わざわざ、偶然にしてくれたのに台無しにするようなことをまた書いてるな。ごめん。
というより、あまり心配はしてなかった。志摩野は言いふらすとかそういうことしないだろうって。その辺は、俺が1番良く知ってるつもり。
熱烈な告白を何度もされている気分なので、振り回されているのは俺の方な気がしてきた。

入学式、おめでとう。
教室の場所はすぐ覚えられるよ。俺は情報棟とC棟の間にあった中庭が好きだったな。今もあれば探してみて。奥まっててあんまり人が来なくて穴場。
あと、サークルは部活と違ってよく見極めて下さい。飲みとか出会いが目的なだけのサークルもあるから、入るならよくよく見学して必要なら相談して。
志摩野も人のこと言えないから心配です。

赴任先は、男だけのノリにちょっと驚いた。男子校に来たのは初めてでパワーに圧倒されてる。
でも、毎日面白いよ。やんちゃで無茶苦茶なバカやって、ずいぶん笑わせてもらってる。
来るのは、ダメです。危険すぎて女の子が来るところじゃないので。

返事は必要ないってことだったんだろうけど、勝手に出すよ。意外と楽しいんだ。

手紙だと、ずいぶん大人っぽくて素直だなあと感心しています。
では、また。

秋場孝行




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