先生、大嫌いです。ーあるふたりの往復書簡ー
5月28日

秋場孝行様
忙しい中、お返事ありがとう。お疲れ様です。
先生は、弟だけどお兄ちゃんでもあるんだね。私は一人っ子だから、きょうだいってちょっと憧れます。

インドア派とか、あまり考えたことなかったかな。別に外が嫌いなわけじゃないですよ。休みを一緒に過ごす友達がいなかっただけで。特に必要とも思ってなかったかも。
心の底から信頼してさらけ出せるような人、いなかったから。でもそれは、私が間違ってるからなんだろうなってずっと思ってた。

だからね、私、先生を好きだと気付いた時、安心したんです。こんな私でも、人を好きになれるんだって。
先生を好きになったのは私の意志で、それは私にとって誇れるものなんです。
終わらせようと思って書いた手紙が、こんな風に繋がると思ってなかったから、まだ好きな気持ちが消せません。
迷惑な話かも知れませんが、もう少しだけ許してください。

急に、何?って思うよね。ごめんなさい。
香緒里ちゃんがね、絶対に恋愛対象に見てもらえない人を好きになっちゃったんだって。
詳しくは書かないけど、それって私もそうなのかもって考えたら、何となくここまで書いてしまいました。

でも、香緒里ちゃんに大切な話をしてもらえるくらい信頼してもらえたことは、素直に嬉しいんだ。
人を信頼することについて、私はまだ全然成長してないけど。

今回は自分のことばかりですみません。

志摩野英里




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