儚く甘い
はじめてのデート
次の日、達哉はみわとの約束通り大学の校門で待っていた。
「おはよう」
後ろから声をかけられて振り向くと、校門の遠くから走ってくるみわが見える。
無邪気に自分の方を見て大きく手を振るみわに、思わず頬が緩みそうになりながら、達哉は立ち上がった。

「別に走らなくていい」
息を切らして走ってきたみわの前に立ちながら、達哉が見下ろす。
「これ、ありがとう」
まだ整っていない息のまま達哉に上着を渡すみわ。
「おう」
昨日の涙のせいかみわの瞳が腫れていることに、すぐに達哉は気が付いた。
もしかしたら夜、一人で泣いていたのかもしれない。
彼女から預かった上着をさっそく羽織ると、何やらポケットに違和感を感じた。

「新しい水、入れておいた。」
無邪気に笑うみわ。
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