儚く甘い
『裕介もほとんど寝ずに毎日研究に明け暮れてるらしいんだ。みわを直接的にサポートできるには今母さんしかいない。だから』
「わかってる。わかってるわ。」
隆文の言っていることはよくわかる。
ただ、踏ん切りがつけられないだけだ。

認めなくてはならない現実。
でも認めたくない。

母の心も、兄弟たちの心も大きく揺れていた。

『とりあえず今日の受診の時にみわに心療内科を進めてみる。俺の病院の心療内科なら、ドクターにあらかじめ状態を伝えることできるし。』
「お願いね」
『じゃあ、みわの点滴が終わったら今夜は帰るから。』
隆文との連絡を終えた母は、父の遺影の前に座り、写真の中の夫を見つめる。
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