儚く甘い
父の命日以外で家族がそろい出かけることはほとんどなかった。

満開の桜の下で、家族全員がそろってシートからはみ出そうなほどの食べ物を並べて座る。

嬉しそうなみわの笑顔を真ん中に兄たちも母も笑っている。

病気のことなど、忘れるほど楽しく幸せな、あたたかい時間。

みわはお腹も心も満たされて、いつの間にか母の膝に頭を乗せて眠ってしまった。

その幸せそうな寝顔に、兄たちも母も、心配や不安しか感じられなかったみわとの時間に、温かな憩いを感じた。

言葉にしなくても、これから訪れる過酷な現実にも、立ち向かう覚悟を改めて決めるのだった。
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