儚く甘い
「ここにお父さんが生きていたらって思うと笑えるわ。きっとこの中でも一番おどおどしてたでしょうね。もしかしたら前の晩から外で待ち構えてたかも。それか泣いてたわね。」
母の言葉にみわも笑う。

「うれしいのよ。隆文も裕介も、母さんも。」
「うん」
母の言葉の背景に隠された思いもちゃんをわかっているみわ。
「楽しみなさい。思い切り。」
「うん」
今しかできないかもしれない。
最初で最後かもしれない。

そうわかっているからこそ、大切にしたいと思う兄弟と母の想いを、みわはちゃんとわかっていた。
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