儚く甘い
「みわ、来たぞ。いや、おいでになったぞ」
らしくない上ずった声でみわを呼ぶ隆文。

「どうも、みわの兄の隆文です。医師をしております。」
仰々しい挨拶をして達哉に頭を下げる隆文。
みわは玄関で靴を履きながらそんな兄にため息をつく。

『ドドドドッ!』
転げ落ちるような大きな音で階段を駆け下りる裕介に、全員が思わず視線を向ける。

「初めまして、みわのもう一人の兄の裕介です!」
その勢いに母が吹き出して笑う。
みわは更にあきれ顔だ。

「初めまして、宝条達哉と申します。今日はみわさんをお借りします。」
深く頭を下げる達哉。
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