儚く甘い
兄たちは達哉よりも深く深く頭を下げて挨拶にこたえる。

「あっ携帯電話忘れちゃった。」
みわが履いていた靴を脱いでリビングに戻った瞬間、達哉と裕介の顔色が変わった。

「妹の病気をご存じだと母から聞いています。」
「はい」
隆文がみわに聞こえないように達哉に言う。
「想像以上にみわの病気は進行していて、あまり状態は芳しくありません。」
「はい」
隆文の言葉をかみしめる達哉。

「でも、誰でも苦しくてしんどくなるような状態でもみわが笑っていられるのは、あなたのようにみわと一緒にいてくれる存在があるからです。」
裕介が隆文の横に並ぶ。
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