儚く甘い
「いつかみわの病気が治ったら、兄ちゃんたちなんてもういらないって言われるんだから、今だけはいっぱいそばにいたいんだよ。」
隆文の言葉に、みわは膨らませていた頬をしぼませる。

兄を心配させるだけだから言わずに飲み込んだ言葉。
『どうせ治らない』

父は病気を発症して2年も経たずに死んでしまったという。
その病気をみわは7歳の時に発症した。
小学校2年生。
それ以来、医学の進歩や新薬の承認もあって命を繋いでいるようなものだ。

1週間に一度の点滴、毎日、4時間ごとに薬を飲まないと、手足の力が抜けてやがてしびれだし、けいれんを起こす。呼吸困難になり、そのけいれんが止められなければみわは命を落とす。
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