儚く甘い
ずっと誰にも言ってこなかった過去を、みわに打ち明けようと決めた。

「みわ」
「ん?」
「きいてくれるか?」
「なにを?」
達哉に抱きしめられたまま、少し体を離して見上げるみわ。

そんなみわの頬に触れ、撫でながら達哉はみわをまっすぐに見つめた。

「俺の昔話を」
みわは達哉の過去を無理に聞こうとはしなかった。
いつか話してくれたらうれしいと思っていた過去を、達哉が話そうとしてくれていることに、みわは近づく距離を実感しながら、心もすべて達哉の言葉に向けた。
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