儚く甘い

「アメリカでみわと同じ病気の人が手術を受けて病気を克服した例が発表されてるんだ。ただ、今のみわは状態があまりよくない。体力をできる限り回復させないと、アメリカに向かう途中で何かがあっても、耐えられない。かなり大きな手術になる、そこを耐える体力も、そこから回復するための体力も、今のみわはない。」
隆文は半年前に発表された医学情報誌の情報を調べていた。同じように裕介も、隆文と一緒になって、詳しい情報を集めようと実際に情報の元になっていた大学病院にアポをとり、手術を受けることができないかを調べていた。

みわの体力さえ回復すれば手術を受けることができると、二人の熱意に負けて、先方の大学からはいい返事をもらったばかりだ。

「でも、そのまま命を落とす確率も高い。高次脳機能障害になった例も多く、リスクがかなり高い手術なんだ。」
開頭術である、手術。
今までの手術の数は50件近く、そのうち亡くなったのは4名。高次脳機能障害やなんらかの二次障害の発症者は7例。まだまだ、高い確率でリスクを負うことになる。