儚く甘い
「大好きだった親父がまるで別人のように痩せて、あっけなく死ぬのを見て、医者になった。絶対に同じ病気で苦しむ人を救いたいって。病気に二度と負けたくないって。絶対に勝ってやるってがむしゃらに勉強して、努力して。」
「・・・」
「なのに、妹まで病気になった。親父と同じ病気に。」
みわを支える家族の痛みも、達哉には自分の胸も締め付けられて苦しいほどにわかる。

「悔しくて悔しくて悔しくて・・・神様は意地悪すぎるだろうって残酷すぎるだろうって、ひねくれそうになった。何度も何度も叫びたくなった。自分に対するもどかしさと劣等感と無力さにバカヤローって。」
隆文の瞳には何とも言えない複雑な感情が浮かんでいる。

「どんどん痩せて弱っていくみわの姿に、余計にいろんな感情がごちゃごちゃになった。」
隆文は自嘲気味に笑ってから達哉の方を見た。
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