儚く甘い
儚く甘い
「いらっしゃい」
病院の玄関に白衣姿の隆文が立っている。

「おはようございます」
達哉が隆文に頭を下げる。
「こっち」
隆文は言葉少なく、みわのいる病室へ向かって歩いていく。

5階建ての病院。
エレベーターに乗った隆文は5階のボタンを押す。

「ここの5階の個室の部屋なんだ。日本に帰ってきたのは半年前。それからここに入院してる。」
「体調は?」
「もう薬を飲まなくてもいられる体になったんだ。ただ、まだ病気の爪痕は体に残っていて、リハビリしながら歩く練習をしてる。手術前にはもう何かを手でつかむことも、歩くこともできなくなってたから。徐々に感覚を戻せるように努力してるんだ。」
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