儚く甘い
大学の授業で、今までは周囲など気にしなかった達哉。
でも、騒がしいくらいのみわの声が聞こえないことに、授業中に気づけば周囲に視線を向けていた。

みわの存在は知っていた。

大学の同じ学部、同級生だ。
みわの周りにはいつだってたくさんの人がいて、その真ん中にみわがいて笑っていた。小さくて、痩せていて、けらけら笑うみわ。どうして彼女の周りにはいつも人が集まっているのか理解できなかった。

自分とは全く違う世界にいるみわ。
興味があったわけではない。

でも、あの日から、死のうとしているみわの姿を見た瞬間から、みわの姿を探すようになってしまった。

そんな自分に嫌気がさして、その度にため息をつくのだった。
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