儚く甘い
「言ったでしょ?私は白石みわ!」
「・・・はいはい」
みわは視線を達哉と同じ方に向けて手すりをつかみながら、大きく深呼吸した。

「なんか」
「・・・」
「苦い毒を吸い込んだ後の空気はおいしく感じる」
「あっそ」
ぶっきらぼうにしか返ってこない達哉の言葉。
「こんなに窮屈な世界で、こんなにどろどろした感情しかないのに」
無邪気で元気すぎるみわの声が、少し震えている。
思わずみわの方に視線を向けた達哉。
その視線の先には少し潤んだ瞳で空を見上げるみわの姿がいた。

「苦い毒の味を知った後は、こんな世界の空気でもおいしいって感じるのね。」
ふっと微笑みながら達哉を見たみわ。
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