儚く甘い
その微笑みはほかの何よりもきれいで、きらきらと光を放つように見える。

達哉は思わずみわの視線から、自分の視線をそらして、空を見た。

口に煙草をくわえて大きく深呼吸をして吸い込む。


こんな絶望だらけの人生ならすぐにでも終わらせたいと何度も思った。

この屋上の手すりを越えて、終わらせてしまいたいと何度も何度も思った。

そうしたら楽になれるのだろうかと、希望すら感じた。

でもできなかったのは、あの人と約束したからだ。
その場所からの景色をこの目で見るまでは終わらせるわけにはいかない。

それが今生きる理由であり、たった一つの約束だからだ。
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