儚く甘い
まるでひな鳥が親鳥から餌をもらっているような光景に、思わずふっと笑う男。

みわは朦朧とする意識の中で、その男の笑顔にくぎ付けになる。


さっきまでの冷たいくらいの無表情が一変して、屈託ない笑顔になる男。

「俺は親鳥かよ」
と笑いながら、男は自分の上着を脱いでみわの体にかけた。

自分の体に寄りかかれるようにみわの体勢を直して、自分は屋上の扉に寄りかかる。

次第に戻っていくみわの顔色を時々確認しながら、何も言わず、何も聞かず、それ以外は空を見つめながらみわが回復するのを待ってくれる。
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