玉響なる風は、水とともに
「……お、揃いましたね。皆は、もうアジトに向かっています。私たちも急いで行きましょう!」

吸血鬼として五百年は生きているベラ・ゴトフリーは、そう言って走り出した。風音が羽はあるが、空を飛んで後を追おうとしないベラの背中を静かに見つめていると、風音の肩を葉月は叩く。

「…………さて、僕らも行こうか」

風音はそう呟くと、手に握っていた扇子を開いて風を起こした。

ふわりと体が浮く感覚にギルベルトは一瞬だけ恐怖を感じるが、風音がギルベルトを支えたおかげで恐怖はすぐに消えていく。

「……ギルベルトさん、どの方角でしたっけ?」

風音の起こした風に乗り、ふわふわとバランスを崩すことなく飛んでいる葉月が問いかけると、ギルベルトは「あっちだよ」と指を指した。

「よし、行こうか」

風音の言葉に葉月と真冬は頷き、空を飛んで皆の後を追い始めた。



「……」

アレス騎士団の団員に紛れて剣を持ったチターゼ・グランツ、アレン、エイモンと一緒に行動していた葉月は、悪霊の懐に入り込むと閉じていた扇子で思い切り悪霊を叩き付ける。

「……悪霊だけで、何匹いるんだ?」

ふぅ、と息を吐き、改めて周りを見渡した葉月は、そう呟いた。

風音や真冬みたいに戦闘系の能力ではないことを悔やみながら、妖と対峙しているチターゼたちに視線を移す。
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