玉響なる風は、水とともに
「……」

咄嗟に行動してしまったことにエイモンは謝るが、葉月は無言でエイモンを見つめた。

「お前ら、何をやっているんだ!」

この館にツヤの怒声が響き、エイモンはツヤの方を見る。そこには、ツヤと薙刀を手にしたイヅナ、そして開いた扇子を片手に持った真冬がいた。

「……エイモンさん、ちょっと退いてもらっても良いですか?」

様子のおかしい葉月をチラリと見た真冬は、そう言うと静かに葉月に近付く。葉月は虚ろな目をしており、その目には涙が溜まっていた。

「……葉月、立てるか?」

その葉月の表情に内心驚いた真冬だったが、真冬は葉月に向かって手を差し出す。

葉月は中々動こうとせず、真冬は盛大なため息をつくと葉月の体を無理やり起こした。

「………………真冬、何だろう……何で、こんなに……胸が、苦しいの……?悪霊って、こんなに辛い思いをしてるのかな……」

しばらく黙ったままだった葉月は、震えた声でそう言いながら泣き始める。

「……困ったねぇ。葉月、あれほど回復の力で悪霊を浄化するなと……」

そう言って姿を現したのは、風音を抱えながら扇子を持っている颯だった。

「颯……に、風音!?」

涙を流しながら、葉月は眠っている風音に目を移す。

「……さっき、風音が倒れているのを見つけてね……」

「うふふっ。ねぇ、その子が眠ってる理由知りたい~?知りたい人~!!」
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