玉響なる風は、水とともに
願い
「……」
風音が夢の中で男性と戦っている頃、葉月は無言で眠っている風音を見つめていた。
アレス騎士団の皆、颯と真冬は悪霊と妖を倒すためにどこかに行ってしまい、残った葉月と風音は颯の張った結界の中の安全な部屋で皆の帰りを待っているのだ。
「はぁ~……まだちょっと経ってないのか……長いな」
壁にかけられている時計を見上げ、葉月はため息をつく。
今までこんなに時間が経つのが遅く感じたことがあるのか、と葉月が感じてしまうほど時間は経っておらず、葉月は風音に目を移した。
「……風音……起きてよ、寂しいよ……風音!!」
葉月は気が付いたら泣いており、溢れてくる涙を手で拭いながら目を閉じる。
しばらくそのままでいた葉月は、ふわりと誰かに抱き締められた気がして目を開いた。葉月の視界に、見慣れたターコイズグリーンの髪が映る。
「……風音……?」
「うん。ごめんね……葉月」
葉月を抱き締めていたのは風音で、葉月は「いつもいつも、心配させやがって……」と風音に腕を回し、服をぎゅっと掴んだ。風音は「ごめんね……」と優しく葉月の頭を撫でる。
「……風音?」
ちょうどイヅナたちが部屋に戻り、イヅナは声をかけるが、2人はイヅナたちの存在に気づくことはなかった。