あ〜あ、本当に知らねえからな。
「―恋雪が好き。」


言えた、十年越しの想い。


俺は安心して、抱きしめる力を強める。


「あ、あの……」


腕の中から恋雪のかすかに震えた声が聞こえる。


「私も……好きっ」


ばっ、バカじゃないの。何で上目遣いでそんな可愛い言い方なんだよ。


「うわ、もう無理。」


「え、な、何が……?」


恋雪が目をうるうるさせる。


あ、誤解させちゃったかも。


申し訳ない気持ちもある一方、恋雪の泣き顔にそそられてしまう自分もいる。


あ〜あ、本当に知らねえからな。


キスさせたくする恋雪が悪いから。


ちゅっ


俺は触れる程度のキスを恋雪の唇に落とした。


とたんに恋雪が顔をぽぽぽっと染め上げる。


「あの、神楽く「凛生」


「え?」


「俺のこと凛生って呼べよ。」


俺は恋雪と至近距離でそう言う。


これはずっと前から思っていたこと。


愛する人には凛生って呼ばれたい。家族も名字が神楽だから。


「り、りお、……くん。」


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