あ〜あ、本当に知らねえからな。
ピロンッ


「あ、ごめん。携帯鳴っちゃった。……あ、もう来たって!
 じゃあまた今度ね?」


恋雪はニコニコして俺に別れを告げ、ルンルンとスキップしながら教室を出た。


はぁぁ、スキップする姿も可愛いと思ってしまう俺は恋雪に溺れすぎてしまっている。
溺れすぎて受験が終わってから脳内が全部恋雪。


俺は恋雪を待っている間、部活をしている下級生を窓から眺めることにした。


******


「ほら、恋雪。凛生くんと凛生くんのお家の人に挨拶しな。」


恋雪と初めてあったのは5歳の3月。


恋雪が家の隣に引っ越してきたのが始まり。


「ふ、ふぇ〜ん!」


「あらあら、恋雪ったら。本当にごめんなさい。うちの子が。」


「いえいえ、大丈夫ですよ。」
「気にしないでください。」


うちの両親が、頭を下げる恋雪の母親に声をかけた。


恋雪が泣いている。何とかしなきゃ。


俺は家に戻ってお菓子の箱を漁った。


「あ、あった!」


俺が大好きな『パンダの行進』っていうお菓子。
俺が一番好きなお菓子だったけど、恋雪にあげようと思った。
今思えば。恋雪に元気になってほしかったんだと思う。


「ん。これ。」


俺は恋雪にお菓子を差し出した。


「え、凛生、それ一番好きなお菓子じゃないの?
 いつも『絶対にあげない』とか言ってるのに。」


「これ食べたら泣き止んで笑顔になれるから、あげるんだ!」


「あら〜、珍しい。」


「……凛生くん、本当にくれるの?」


恋雪が確かめるように俺の顔を覗く。


「うん。」


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