幸福を呼ぶ猫
そんな僕を不思議そうに見る黒猫に話しかける。
「ねぇ、僕の飼い猫になる?」
「にゃぁ」
肯定の返事だろう。
じゃあ、名前を考えないと。
でも僕は何かに名前なんて付けたことない。
「クロ……」
少し考えて出てきたのはこれだった。
「黒猫のクロ。嫌だ?」
無難過ぎるその名前に、自分のネーミングセンスのなさを痛感させられた。
でも、目の前の黒猫…いや、クロは嫌そうでは無かった。
「クロよろしくね」
「にゃぁ」
クロの寝床が無いので、その日はクロと一緒に寝た。
なんだか、いつもより布団の中が暖かくなった気がした。
その日から僕の生活が少し変わった。
友達の居ない僕は、学校でもバイト先でも必要最低限の会話しかしてこなかった。