余命宣告された君と恋をした

5

春樹side

「もう文化祭か」

僕がそう言うと、一ノ瀬は寂しそうな顔をする。

「そうだね」

僕は無理やりテンションを上げて、言う。

「楽しみだな」

「うん」

そう言っても、一ノ瀬は元気にならない。

やっぱりそうだよな。

余命宣告について詳しく聞いてないから僕にはわからない。

でも。

好きな人が悲しい顔をしているのは嫌だ。

なにか方法はないか、と考えていると学校に着く。

そのまま、授業を受けていると。

「では劇は『ロミオとジュリエット』で決まりです!」

そんな学級委員の声が聞こえる。

女子の声だ。

そういえば、変わったんだったっけ。

先生に今までの事がバレたらしく、須田君は委員を外されていた。

あまり直接的にやってくることはなくなり、一ノ瀬とよかったと話していたのを思い出す。

「一ノ瀬さん、やってくれますか?」

考えていると、そんな声が聞こえる。

ジュリエットは一ノ瀬が選ばれていた。

ロミオは演劇部の女子だ。

僕はもちろん裏方だ。

一ノ瀬に楽しんでもらえるように頑張ろう。

そう思った。



「加賀、それこっちに持ってきてー」

「わかった」

僕は今、劇の最終チェックをしている。

たまにだけどこうやってクラスメイトと話す機会も増えた。

僕が変わったという事だろう。

これも一ノ瀬のおかげかな。

そう思いながら準備をする。

「一ノ瀬さん、頑張ってね!」

一ノ瀬は女子に囲まれて、応援されている。

「うん、頑張るね!」

一ノ瀬はそう言っている。

久しぶりに見た満面の笑みだった。

よかった……。

そう思いながら、僕は作業をした。



「ああ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」

そんな一ノ瀬のセリフを言う声が聞こえる。

名場面を終えて、いよいよクライマックスだ。

ジュリエットが薬を飲んで眠っている。

ロミオが会いに来る。

そしてロミオが死んだ後。

ジュリエットが起きて、そばで死んでいるロミオをみる。

そして、ロミオの後を追うシーン。

一ノ瀬が胸を貫く真似をして、倒れた。

その瞬間、体の力が抜けたような気がした。

ピクリとも動かない。

「一ノ瀬?」

僕は劇が終わってすぐに駆け寄る。

一ノ瀬は劇が終わってもなお、動かなかった。

「一ノ瀬!」

そのまま、一ノ瀬は病院に搬送された。



文化祭が終わった後、僕はすぐに一ノ瀬のところに行った。

病院についても一ノ瀬は眠っていた。

看護師さんが言うにはもう起きない可能性もあるそうだ。

「なんで……」

思わず涙がこぼれる。

そのまま泣いていると。

急に息が苦しくなる。

意識が朦朧としてきた。

もういっか。

一ノ瀬のいない世界に意味などないんだから。

「好きだよ」

そう言って意識を手放した。



華怜side

目を開けると、そこは病院だった。

でも体がだるい。

そろそろかな。

隣を見ると、はー君がいる。

最後にはー君と話したいな。

そう思ってはー君を触る。

でも、どれだけ揺らしてもはー君は起きない。

まさかと思って口元に耳を近づけると。

……息をしてなかった。

わかっていたことなのに。

はー君が余命宣告されていることなんて。

なのに。

胸が痛い。

「好きだよ」

そう言ってもはー君は起きない。

すると、急に体が重くなる。

もう無理かな。

唇にキスをする。

「じゃあね」

そう言って私は意識を手放した。
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