a piece of cake〜君に恋をするのは何より簡単なこと〜
すると周吾は手に持っていたビニール袋を開け、中からサンドイッチを取り出す。
「お昼って食べた?」
「……まだです」
「良かった! ここのサンドイッチ、美味しいって評判なんだ。いっぱい買ったからさ、良かったら一緒に食べない?」
渡されたサンドイッチはたくさんの具材が入っていて、断面がカラフルで可愛くて、食欲をそそられた。
「もらっていいの?」
「もちろん」
周吾から受け取ったサンドイッチをじっと見ていると、久しぶりに空腹感を感じた。隣で美味しそうにサンドイッチにかぶりつく周吾を見て、お腹が鳴った。同じようにサンドイッチを食べた那津は、あまりの美味しさに目を見開く。
「美味しい……パンが甘い……」
「そうなんだ。食パンが人気のお店なんだけど、俺みたいな独身男には野菜も摂れるサンドイッチはありがたいんだよね」
さりげなく"独身"アピールをされたような気がして、やはり警戒してしまう。でもこのサンドイッチは美味しいし、たとえ餌付けされているとしても、悪い人ではないのかもしれないと思い始めていた。
「ご飯が美味しいなんて久しぶり……」
那津がポツリと呟くと、周吾は食べ終えた包紙を丸めてから口を開いた。