ねこのひるねの、ひとりごと
そう固く決心していたのだが。
父と母と離婚して。

しばらくしてかかってきた1本の電話。
母がしばらく話して、無言で渡された受話器。
無言で(出なさい。)と母の目が告げていた。

(何かが起こった。)
恐る恐る。「もしもし」
電話の向こう数年ぶりの父の声。

「ガンやて。肺の。で、入院すんねん。」
思考が停止した。
「疑い、なん?」
硬い声が出た。
「いや。決定。」

後、どんな会話をして電話を切ったか、記憶はない。

「今は自分の感情は捨てや。会いに行き。」
そう言って、母も付いてきてくれた。
ホントは「他人」なのに、ごめん。

何年ぶりかな。父に逢った。

顔、いや目を見た瞬間。

やっぱり親子なんや、と思った。
いつも見ている自分の目と同じ目がわたしを見ていた。

わたしの中で何かがストンと腑に落ちた気がした。

それからたった半年後、父との永の別れがやってきた。

喪主もして送った。

喪失感も哀しみも、未だに持ってる。
けれど。

あの時自分の感情を殺して会いに行ったから。

「ああすれば」、「こうしとけば」と言った後悔も未練もなーんも残ってない。
純粋な親子の情からくる哀しみと喪失感だけ。

これはずっと抱えていくもの。
だってこの「アナ」はあのあんぽんたんでしか埋まらない!
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