ねこのひるねの、ひとりごと
そんなこんなじいも、年には勝てず何歳だかの誕生日にバイクの免許を返納。

代わりにシルバーのワンバランスのスタンドの自転車を買った。
頭は角刈りで祖母の手編みののセーターに色を合わせたズボンを穿いて。
シルバーの自転車で走って行くじいちゃん。

そんなじいちゃんにファンがいたとか、いないとか。
いいんじゃない?

そんなじいちゃんは、その頃前の仕事を辞めて、ばぁちゃんと一悶着あった後、
違う仕事に就いていた。正社員ではないからばあちゃんがブツブツ言ったとか。

その仕事は夜勤だったから、わたしが学校から帰る頃は就寝中だ。

でも、稀に起きていて
「じいのポケツ、手入れてみ?」
「???」
わたしがポケツに手をつっこむと、何やら小さく畳まれた紙が手に触れた。
出して見ると小さくきっちり畳まれた500円札だった。
じいを見ると。
「じいとの内緒。ばあには内緒やで。」
内緒のお小遣いのつもりなのだろう。

わたしは困った。本当にどうしようかと思った。
だって収入が減ってばあともめてたじいの大切な稼ぎ。

ばあがそばにいない時に、母に相談した。
「これはな、ひるね。じいがしんどいお仕事して貰った大事なお金やで。
大事に置いといて、あんたがホンマに要る時、使わせて貰いなさい。」

2~3日して母はわたし名義の通帳を作って来てくれた。
「これはひるねの通帳。ここにじいのお小遣い、今は貯めとき。
じいのあんたを思う心やから。大事にしいや。」

パート職員として就職してるから大した金額ではなかったはず。
自分が就職した時、その時のじいの1か月の給料に占める500円の重みとわたしのこれからを老婆心で考えてくれていた祖父の愛情に頭が下がった。

そして。
その意図を正しく理解して諭してくれた母にも。

あんぽんたんの遺伝子を半分持った娘が、少しでもお金で困らないでいられるように、と。
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