ねこのひるねの、ひとりごと

ひったくり

結局、その彼女が異動した後。
15年くらい同じ部署に留まることとなった。

この頃は新入職が少なく、10年を超えても勤続年数は下から数えたほうが早かった。

もうこの部署で異動はないまま行くのかな?
仕事は覚えたし、そこそこの速さでこなせる。

人と人との摩擦で、ちょっと嫌な思いもしたけど。
ま、仕事でしか関わらない人達だしな。

片道1時間半の通勤で、少し残業すれば最寄り駅に着けば、とっぷりと日は暮れている。
そんな日々にまで慣れてしまっていたわたしに。
ある出来事が起こった。

その日、本当は残業予定もなく、靴を帰り道のショッピングモールで買おうかなと、いつもは持たない2万円という金額を財布に入れていた。

ところが、そんな時こそ思い通りに事は運ばず、残業となってしまい。
もちろんお店なんかも閉まっていて。
肩をおとしたわたしは、最寄り駅から家までのいつもの田んぼの中の舗装道路を自転車でちんたら走っていた。

と、後ろからバイクの走ってくる音が。
当たらないよう道の端に寄ると。
バイクはわたしの自転車のすぐ横に付いてきて。
2人乗りしていた、後ろの人が前かごからわたしの鞄をひっつかむとバイクは速度をあげて走り去った。

全くあっと言う間の出来事で、バイクのナンバーなど見る間も無かった。

(なんで、わたしの鞄!)

”ひったくり”にあったのである。

とりあえず、ついて行かない頭で家まで帰った。

この日は父も帰宅しており、母と2人に話をした。

110番通報で家に来た警察官は。

鞄の特徴、被害金額など、被害届の記載を終えた後。

母に。
「娘さんが言ってはるように、たいていバイクのナンバーを見ることは無理。」

「そういう奴らは初めから物色しとる。カモになりそうな人を。」

「たぶん、鞄も出てこない。出てくれば連絡はするけど。」

「だから、夜道を帰る時は、その人がしっかり気をつけて貰うしかない。」

確かにおっしゃる通りなのだが。

その時のわたしには、鞄を盗られた上に、警察官にまでしっかり気をつけてないからこうなったんだ、とお説教された気分だった。

唯一もってたキャッシュカードを止めてもらい。
翌日には鞄に入っていた職場の社員証の再発行手続きをし。
見た目元に戻ったけれど。

今度は。
人が全員、どろぼうに見えるようになり。
夜、暗くなったら怖くて、独りで帰れなくなってしまった。

まあ。日にち薬で。
それらは徐々に軽減されていったけれど。

母の勘侮るなかれ。パート2。

”亀の甲より年の劫”

遠くの職場を選ぶの、しんどいから待ったら?
ハイ。あなたの言葉が正しかった。
今更泣いてもしょうがないけど。

24歳の遊びたい盛りの出来事。

"後悔、先に立たず”

今でも。
PTSDみたいで、暗いところ、後ろからくるバイク。
条件がそろってしまうと、スーッと血が引く感じで怖いんだ。

全て、自分の選択が生んだ結果だ!
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