『 最後から、始まる。 』~卒業~ きみと過ごす残り1ヶ月
高校1年の2学期だったかな…
昼休みに新しい曲の楽譜のコピーをもらいに
音楽室に行った時
ピアノの音色が聴こえてきた
🎼♩.。˖*♪¨*•.♫♬。.:*☆ .。˖*♪¨*•.♫♬。.:*☆
あ、新しい曲
早く歌いたいな…
早くみんなで
私が一番に伴奏を聴けたと思ったら
先客がいた
誰…?
ピアノに向かう先生を
ジッと見てる後ろ姿があった
同じクラスの杉山
ピアノ好きなのかな?
意外
ピアノの音が止まった
「杉山くん、なに?
ごめんね、気付かなくて…
なんか、用だった?」
「いや…別に…」
「あ、ピアノ?好きなの?
もしかして、弾けるとか?
弾いてみる?」
「弾けないよ
…
自分ができないことできる人って
なんか、惹かれる」
「杉山くんだってすごいじゃん!
私、子供の頃から足遅いからさ
あんなに速く走れる杉山くんが羨ましくて」
「速いか遅いかは別として
誰でもできることじゃん」
盗み聞きするつもりなかったけど
入るタイミング失った
ふたりの話が途切れるのを
入り口で待った
「もぉ走るのやめたいな…って
最近思う時ある」
「杉山くんでもそんなふうに思う事あるんだ」
「あるよ…」
♪ボーン…
ピアノの低い音が響いた
「ん?
杉山くん、弾いてみる?」
先生の声
先生の声の後
杉山の声が聞こえなかった
ん?
「なに!?どーしたの?杉山くん!」
先生の慌てた声が聞こえてきた
音楽室を覗いたら
杉山が
ピアノの上の先生の手を握ってた
見たらいけない気がして
そっとその場を立ち去った